【芥川賞受賞作】「コンビニ人間」は仕事にやりがいを見出したい人が読むべき一冊
以前から読みたかった一冊。
150ページほどで字も大きめのため一日集中して読めばあっという間に読み終えてしまえるボリュームです。
36歳未婚女子、古瀬恵子。
大学卒業後も就職せず、コンビニバイトは18年目。これまで彼氏なし。
日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、
清潔ばコンビニの風景と「いらっしゃいませ」の掛け声が、
日々の安らかな眠りをもたらしてくれる。
ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが・・・・。
主人公の36歳独身コンビニ古瀬は、ことあるごとに学生時代の友人から、妹から、白羽から、現状の在り方にけちをつけられ「結婚をし家庭を持つ」「正社員として社会に所属する」という社会的規範を押し付けられます。
その規範と対照的に、「たかがコンビニ店員」であることの世間からの冷たい目線を受け流し自らの価値観の中で自分を肯定し立派に生きていく古瀬の様子が描かれています。
一部インフルエンサーと言われる人たちの中で「勤め人dis」をtwitterなどのメディアで
発言する様子が見受けられます。
「会社に属しても搾取されるだけ」
「自分で選び取った生き方をすべき」
「資産になる仕事をしろ」
などとつぶやかれております。
たしかにその通りの部分はおおいにあると思います。
「上司の顔を伺い鶴の一声で変わる決定」
「無駄なサービス残業」
「スキルにならない仕事」
コンビニ店員でアルバイトをしながら生きているということは
社会的スキルの身に付く生き方ではない側面もあります。
しかし、古瀬は単純労働であるはずのアルバイト店員である自分を積極的に生きている様子が描かれています。
食事を終えると、天気予報を確認したり、店のデータを見たりする。天気予報は、コンビニにとってもとても大切な情報源だ。昨日の天気との差も重要だ。今日は最高気温21度、最低気温14度。曇りのち、夕方からは雨の予定だ。気温よりも寒く感じられるだろう。暑い日にはサンドウィッチが売れ、寒い日にはおにぎりや中華まん、パンが良く売れる。カウンタフーズも気温によって売れるものが違う。日色町駅前店では寒い日はコロッケがよく売れる。ちょうどセールでもあるので、今日はコロッケをたくさん作ろうと、頭に叩き込む。
僕自身も昔コンビニをはじめ飲食店などでアルバイトをしてきましたが、レジをたたき商品を補充することが自分の仕事だと考えていました。
シフトに入る時間内17:00~22:00をアルバイト店員として何事もなくこなせばいい。
時給で働くアルバイト店員でここまで考えている人が世の中の何パーセントいるのでしょうか?いやいや、正社員でも自分の与えられた仕事さえこなして毎月一定の給料さえ振り込まれればそれで満足という人がきっと多いでしょう。
まさに「コンビニの歯車、社会の歯車」であることを説教的に生きている様子が描かれています。
ただ単純に、組織に属して給料をもらっている人を「勤め人」などと一色にして呼称することは間違っているのです。
色々な生き方、人生観があっていいのです。
そんなことを考えさせられる一冊でした。